「脳低温療法をわかりやすく解説した本」 おすすめ度:
投稿日:2008-01-16
道路交通事故による死傷者の減少の理由として、安全対策の強化があげられることが多いですが、救急救命士の法制化とその処置範囲の拡大、そして病院の救急医療の発達による複合的な結果といえます。
本書の第1、2、4、5、8、11章では脳挫傷、クモ膜下出血、脳動脈破裂などで重篤な状態にある患者の脳低温療法による治療経過がドキュメンタリーとして描かれます。第1章は本書の導入部として治療の詳細なプロセスが描かれ、11章ではヘリコプターによる救急搬送の有効性が述べられています。そして第7章は治療を受けた患者のリハビリテーションの姿が描かれています。
第3章は日本の1960年代の立ち遅れた救急医療から1990年代までが解説されます。そして林成之助教授(当時)が1987年に日本大学医学部附属板橋病院救命センター設立準備委員会のメンバーとなり、センター設立の準備に取り組み、脳低温療法を確立させて「脳低温療法 −重症脳障害患者の新しい集中治療法」(1995年、総合医学社)を書き上げるまでが描かれます。
第6章は集中治療室で働くナースの姿、9章は1996年の林教授のアメリカのNIHにおける治療技術の発表とそれに対するアメリカ医学界の反応、そして脳低温療法の理論的裏づけと体系化について解説されます。
第10章は1997年の「臓器移植法案」に伴う脳死判定の問題、著者の関わりと「修正案」が両院で可決される過程、脳低温療法の「金のかかる医療」という批判に対する反論が記載されています。そして第12章では「問題解決型集中管理システム」が構築されるまでの過程と、治療を受けた患者のその後の姿が描かれ、まとめとされます。
脳死判定の難しさを本書で改めて認識することができました。