「子供の絵本にこれほど難しい内容は必要なのでしょうか。」 おすすめ度:
投稿日:2005-10-24
ぼくらDNAたんけんたい、というシリーズ名で一挙4冊出されたうちの一冊ですが、4冊のどれも最近の分子生物学の知識から「細胞」「免疫」「遺伝子」などを子供向けに説明しようとした絵本です。
柳澤桂子さんの訳、というのにも惹かれて読みました。絵本と言う体裁、大きさ、ページ数などの雰囲気は小学校就学前ぐらいが対象に思えますが、内容は正確で、詳しいです。
DNAからタンパク、性染色体からクローンのつくり方まで、難しそうなところも丁寧にわかりやすくしようと書かれています。でも、かなりいろいろ詰め込んであるのできちんと読まないとすこしわかりにくい感じもします。「教えて」という子供に親が読みながら説明していくならば良いのかもしれません。
漫画的な人物画の台詞が、あんまり意味のないようなことを言っていたりするのも、親しみやすさより却ってわかりにくくしている感じがありました。最初のページの吹き出しがいきなり「わたしたちはみんな、遺伝子機械よ!」なのですが、原題のGene Machinesからはつながりますが、邦訳からはつながらず、なにか唐突です。
気になったのは染色体の交叉が「お父さんとお母さんの染色体がからまって起こす」というのと、できた染色体が「進歩している」と言っていること。前半は事実とは違いますし、後半は「進歩」は言い過ぎのように思います。せめて「こうやって少し変わっていくことも役にたっているんだよ」では?このぐらいは眼をつぶらなくてはいけないのでしょうか?
子供向けに、「わかりやすく」とまとめようとするのはとても難しいことだと思います。複雑にしすぎないよう、いい足りなくならないよう。でも、どうやら書き手の気持ちが欲張りすぎてゴチャゴチャしてしまうことが多いのではないでしょうか。
もともと複雑で難しいことを簡単にわからせようとすることに無理があるのかもしれません。「これ以上は難しいから、知りたかったらもう少し難しい本を読めるようになりましょう」と更なる勉強に誘い上げるぐらいでよいのではないでしょうか。その年齢なり、の疑問のレベルで説明できること、を見極めることが難しいけれど必要でしょう。この絵本を読んで、幼児が理解してしまうなら高等教育はいらなくなってしまいますものね。