基礎医学 | 薬学 医学

アパシー・シンドローム (岩波現代文庫)

笠原 嘉
アパシー・シンドローム (岩波現代文庫)の商品情報を見る アパシー・シンドローム (岩波現代文庫)をショッピングカートに入れる
アパシー・シンドローム (岩波現代文庫)の詳細
  • おすすめ度:まだ評価されていません。
  • 出版社:岩波書店
アパシー・シンドローム (岩波現代文庫)のカスタマーレビュー

「共感・同情を欠くというアパシーへのアパシー」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2007-05-05

 「今、若者が無気力化している!!」こんな扇動的な言説商品はよく売れると見えて、手を変え品を変え売り出されては好評を博しているようです。本書の文庫化時の主力商品であった「ひきこもり」や最近では「ニート」なる売れ筋商品がありました。おそらくこれからも新しい若者無気力論が発売されることでしょう。このような単純な言説は無意味ではありますが、一般の関心を喚起し、現在実際問題として無気力に陥っている人達への真摯な接近を生み出すという点で歓迎すべきこともあるように思います。
 本書はこのように一般の若者の無気力について、真面目に考えたいという方々には是非とも読まれるべき名著です。重要な点は、著者があくまでも臨床精神科医、精神病理学者という立場の一人の当事者として症例に向き合い、解明に努められている所にあります。そこには無関係を装い、良識を騙る無責任な常識人としての感情的なお説教や価値表明はなく、患者に寄り添った共感と理解への努力があるのみです。絶対的な安全を保障された常識という穴倉に引きこもっての非難ではなく、自らも医者として患者と向き合い続けるという責任を負った上での無気力との対決。この立ち居地に立つからこそ偏見を排した事象の理解が可能となっているのです。原書が出版された1984年の15年前にはすでに無気力は看取できないまでとなっていたと著者は言います。それは、実に戦後生まれの青年が社会へ出んとしたその時から始まったということを意味しています。この一事だけを見ても“最近”の若者の問題という前提を採る言説に絶望的な無関心と不勉強があり、誠実な論者は当然自らの人生もその無気力を生んだ社会の歴史の中に在ったことを見出すでしょう。只、客観的である悲しさか、アパシーという語を生んだウォルターズ同様、著者が最新の動向には積極的な関心を失われておられる様なのは残念でならない所です。

「社会的ひきこもりも」 おすすめ度:レビュアーのおすすめ度 投稿日:2004-08-14

主に大学入学後くらいの年齢の青年の精神病理?について述べたものが中心である。

笠原氏は本書で「精神医学は本来価値判断からフリーであるべき科学だ」と言うことで自らの拠って立つ位置を確認しているが、この基本的な姿勢によって笠原氏が紋切り型の「未熟な若者に対する苛立ち」のような立場とは無縁であることが分かる。

おそらくこの立場から笠原氏は青年のアパシーを個人の問題としてだけ処理しようとするのではなく社会も含めた問題として考えている。これは怠惰とアパシーの違いを明確にする上で外せない視点である。

翻って現代、青年の未熟さを嘆くだけで何ら有効な方策を提示し得ない「若者からひきこもる大人」が多数存在することを考えれば本書の論考は今なお現在進行形である。

最後に斎藤環氏の解説から。

「ひさしぶりに赤鉛筆でアンダーラインがびっしりと引かれた本書をひもとき、再読してみてあらためて驚かされた。主として1970年代に発表されたこれらの文章に描かれた青年期のありようは、ほぼそのままの形で現代の青年期にも該当するのではないか。」