「文系学生にはちと難解だが生命科学の入門書」 おすすめ度:
投稿日:2006-06-23
生物科学(Biotechnology)「平易」に解説するために、立命館の生命工学者たちが、よってたかかってつくり挙げた力作でする。第1章は、生物学の歴史を概観し、第2章では分子から細胞へ、第3章では多様な生物、第5章では多様な生物社会、第6章では生命を取り巻く新しい細胞に言及が及んでいる。21世紀が生命科学の時代であることを告げる絶好の入門書である。
第1章では19世紀後半の研究水準と20世紀の研究水準が大まかに示され、DNAの基礎概念転写とセントラルドグマ、遺伝情報の発現調整機構、代謝・生殖・遺伝・進化について語られている。
細胞、環境を扱う諸章を経て、詳しく語られる。
最後はAIDS,SARS、鳥インフルエンザ、エボラ出欠熱、ラッサ熱など近年流行している伝染病について丁寧に説明してあり、バイオフィルムと呼ばれる環境微生物のついて述べられ、プリ音についても言及され、最後に生命をつくる核の全能性によってクローンが生み出され、ゲノム(遺伝子genoと総体を意味するomeによってゲノムという呼び方をされること、ヒトゲ遺伝子としてノムの98.5パーセントは情報のない部分であること、設計図であるゲノムが、アミノ酸配列から蛋白質のりったう構造を予測し、機能を明らかにすることは新しい問題であること、ゲノムの創薬から新しいES細胞、移植技術が可能になり、ヒト胚幹細胞から治療と生命倫理の話になり、人類が不測の事態に備えて自分自身の体性幹細胞を保存しておくことが常となる時代が遠い未来ではないことを示唆している。
この本は現代の生命科学の到達点を知る上で貴重な文献であろう。しかし、私は文系学部に学ぶものとして、いまいちの困難を感じる。ワトソンの『二重らせん』と併読することをお勧めしたい。